2003年7月、原宿・国立代々木競技場オリンピックプラザ特設会場にて「ジュラシックパークインスティテュート」が開催。
ロボットの恐竜や映画撮影で実際使われた恐竜のフィギュアなどが展示された。しかし、何か物足りない。「恐竜には自由に歩いて暴れ回ってほしい」と映画の世界に入り込んだような感覚を味わいたかったのだ。そうした恐竜体験ができないのであれば、自分たちで作ろうではないか——。これが歩く恐竜を開発するきっかけ。ここから"歩く恐竜"の構想が始まる。
周りの理解が得られず、冷たい視線を感じながら試行錯誤を開始。作っては試し、試しては作って、いくつものパーツを試作した。
恐竜制作のために所沢の大きな旧鉄工所を借りる。
制作者たちは「有限会社ON-ART」を設立し、無謀にも全資金を恐竜制作にそそぐ。
そして、ついにヤングアロサウルス1号制作に着手。 造形師の方々の協力を得ながら、真冬の極寒の中、恐竜づくりを進めた。
春頃。ついにアロサウルス1号がほぼ完成。歩く姿を見た制作者たちは皆で歓喜した。
しかし、膨大な制作費によって会社は借金が膨らみ、身動きが取れない状態に。
初夏、取引先から「こどもの日」のイベントでのデモンストレーションの依頼を受ける。不完全な部分を含め、実際に使えるように内部機構を大改造。出演の前日に制作者が入院するなど、冷や汗の出るデモンストレーションに。
夏頃、「Walking with Dinosaurs」という動く恐竜のイベントが海外にある事を知る。
「開発した恐竜が二番煎じと捉えられはしないか」という疑念に駆られ、失意のどん底に落ちる。 しばらくの間、恐竜を見るのも辛くなった。
しかし、その後に「Walking with Dinosaurs」は恐竜ロボットを電気自動車の上に乗せ、歩いているように見せる仕組みであることが判明。小型の恐竜には、操作している人間の足が堂々と見えているものも。
ON-ARTの機構・コンセプトとは全く違ったものだった。ON-ARTのコンセプトは「まるで生きているような恐竜を体験すること」。動かす構造や機構は見ることはできないつくりだ。自信を取り戻した制作者たちは、すぐに自分たちの機構を特許申請することに。
夏、名古屋の恐竜博の開会式への出演が決定。200人を超える古生物の研究者の前での出演だった。
初舞台が恐竜の専門家200人の前となったが、なんと先生方からは大盛況。そして、ここでの評価が翌年の東京、新潟での恐竜博の出演につながる。
「恐竜博」への長期出演をはじめ、ショッピングモールや企業のプライベートイベントなどの出演も決まり、恐竜は本格始動。
出演と出演の間も寸暇を惜しみ、少しずつ機構やフォルムおよびライブの演出を改良。たくさんの人の目に触れることで「なんとかもっとリアルに」という思いがつのる。「5分でもっといいものを」そんな気持ちで改良を重ね、恐竜は日々刻々と成長を遂げた。
制作者一同は、恐竜を制作するだけでなく、出演現場に行って恐竜と共に飼育員として出演。制作した恐竜がお客様の前へ歩いていく時、その時、その場で、恐竜をコントロールし、恐竜が人間にとってどんな存在なのかを直に感じている。観客の皆さんの「歓喜と恐怖と驚き」が恐竜制作の重要な要素といえるからだ。
ここから、「現場に出演しないと恐竜制作には携われない」という会社のポリシーが生まれる。
春、全長3.5mの小型肉食恐竜「ラプトル」の開発を始動。小さなサイズならではの難しさを痛感。前回の制作の際に費用を使い過ぎたことがトラウマとなり、他の仕事の合間で制作することで悪循環に。デビューまで半年以上を費やした。
恐竜本体と、「大きな恐竜を安全に動かす演出システム」で2009年東京都ベンチャー技術大賞特別賞を受賞。
表彰式では、石原都知事(当時)に喜んでいただき和やかなムードに。
表彰式会場の展示はこの年制作したヤングアロサウルス2号。最初につくられたヤングアロサウルス1号を第1世代とすると、このヤングアロサウルス2号は第2世代ともいえ、より大型で軽量化し、操作性がさらに向上したモデルとなった。
恐竜のシリーズ化をめざし、今までの2足歩行恐竜だけではなく4足恐竜の開発。そして、2足歩行のサイズアップを目標にした。
資金繰りのために、東京都の新製品新技術開発助成制度に応募。書類審査、そしてプレゼンテーション。膨大な書類を提出。
プレゼンでの紆余曲折はあったものの、無事に審査を通過。都の助成を受けられるようになり、ティラノサウルスとステゴサウルスの制作が可能に。恐竜シリーズ化に向けてのベースになる恐竜の機構開発に成功した。
全国各地で開催した興行「恐竜ライブショー」を、総合的な恐竜体感プロジェクトへ進化。新たに「DINO-A-LIVE(ディノアライブ)」としてスタートをきった。ON-ARTのさらなる恐竜体験の探求が始まる。
1月、制作者は恐竜開発により経済産業省関東経済産業局管内の「第4回ものづくり大賞」の優秀賞を受賞。そして、「第3世代恐竜開発」として新しい機構を備えた新型の恐竜の開発に着手している。
それまでに得られた恐竜制作のノウハウを統合し、アロサウルス2頭の同時制作に着手。操作機構や可動構造をほぼ完成させ、汎用化に成功。
量産化に成功したアロサウルス達が大活躍。日本の恐竜研究の聖地「福井県勝山市」での恐竜ライブイベント開始。以降、夏の定番イベントとなる。
バラエティー系・教育系のTV番組やイベント等に多数出演。大物ミュージシャンのコンサートツアーなどにも参加。
新型アロサウルスで培った制作・運用データを糧に、満を持して8m級の新型ティラノサウルス開発に成功。完成披露記者会見の模様は国内外のメディアに40件以上取り上げられた。
大型4足歩行恐竜トリケラトプスが完成。白亜紀最高のライバル対決、「ティラノサウルスVSトリケラトプス」を実現。
GW、渋谷ヒカリエにて体感型恐竜サファリライブショー「ディノサファリ」スタート。進行役に実力派の俳優を起用し、演劇仕立てのオリジナル演目を創出。恐竜ライブショー演出の新たな第一歩を踏み出す。
所沢くすのきホールにて、本格的恐竜ライブショーとしてオリジナル公演演目「ディノアライブ不思議な恐竜博物館」公演を開催。
クウェート王政府からの招聘で、クウェート王立博物館のオープニングセレモニーに出演。
また2017年に引き続き渋谷ヒカリエにてディノサファリ開催。新型肉食恐竜「ユタラプトル」SNSにて大好評を得る。
夏休みには全国5大アリーナツアー「世界一受けたい授業 恐竜たちに会える夏」の出演恐竜として10頭が横浜、さいたま、名古屋、大阪、福岡を巡る。
現行での最小恐竜「子供トリケラトプス」と最大恐竜「スコミムス」が同時に完成。
渋谷ヒカリエにて3度目になるディノサファリの目玉としてデビュー。
現在は、「第3世代恐竜開発」の真っただ中。将来的には15~20頭のさまざまな恐竜が出てくる大規模なイベントやテーマパークの実現を目指し、日々奔走している最中だ。ON-ARTは、まだまだ輸入業者や代理店に間違えられることも多い。しかし、独自コンテンツとして恐竜の企画デザイン製作から恐竜の操演訓練、演目の制作、運用まで出来うる限り自社で創造構築し、所沢から始まった日本の一零細企業として世界に通用するコンテンツをこれからも作り続けていきたいと考えている。